放菴と契月を観た

2015-03-15

三月前半に行った
大好きな日本画家の展覧会ふたつ
しかも
何れも比較的著名な割に
まとめて見ることが出来るのは滅多にない画家で見逃せないもの
(今後はもっと頻繁に見たい)

写真はアトリエ陶器の筆洗の船にチケット二枚
手ぬぐい二枚は、浪人時代の戦友であったhちゃんからもらった「同じ穴のムジナ」を描いたもの

没後50年 小杉放菴
〜3月29日
出光美術館

水郷 1911
キャンバスに油
放菴デビュー作
漁夫を描いているのだが、東洋らしいコンポジションと画面から漂う色気と、西洋的な、但し、ただならぬ実存感
これを観れただけでも東京まで来た価値があった

日本画家として有名だがはじめは油を描いていた
油絵の初期のものは

スペイン風景 1913
ブルターニュ風景(牛の搾乳) 1913

など、風景の小品が味わい深く凄くいい
後の池大雅に影響されたとされる墨の文人画風山水の小品群(会場第四章)に繫がっていく細やかな筆致

会場第六章「神話と古典に学ぶ」
おそらくここがこの放菴展の見せ場、山場で実際、面白いところ

天のうずめの命 1951

当時竣工したばかりの日本最大の最大の出光興産タンカー
日章丸二世の為に描かれ船長室に飾られたという
それにしても、出光佐三が放菴のパトロンとなったきっかけが
佐三の惚れ込んでいた仙厓と放菴に通じるものがあると直感したからというからすごい
当時の実業家の美術への関心と博識、文人意識

アート自体も乱立混沌して、今となっては完全に消え去った古き良き時代だけれど、
また本当に価値あるものが価値あるものと評価される
格差は打破されつつ、文化に関しては、其方に戻っていったらいいなあと思う

太宰師大伴旅人讃酒像 1947

この作品の為の人物(顔)の素描が素晴らしい

金太郎遊行 1942

さて
気を取り直して
私の今回の最大の目的は
放菴の写生(= あまり知られていないと思うのだが素晴らしい、大感激であった)と花鳥画
を観ることでした

それを叶える最終章 第九章「花鳥・動物画」
展示替えがあるようなので出来ればもう一度行きたい

珠鶏(石榴とホロホロチョウ) 昭和

山中秋意(ヤシオモミジとヤマドリ) 1935

()内モチーフはタイトルでなく私の覚書
kはキャンバスに油彩
mは紙に日本画

一番収穫だったのは、kのマチエールとmのマチエールの違い
朱と金を生かした色使いが日本画っぽいのもあるが
画集等、印刷で見ただけではkとmの描き方の違いや、kが油彩画であるとわからないと思う
そのキャンバス地を生かした筆致の妙はまじかに見ないとわからない美しさがある

別企画で
ルオーとムンクの小展示があったが、
基底材が完全につぶれて外国のショートケーキのように
素材感としてはクリームの塊としかわからない描き方を見て
東洋らしさと西洋らしさの違いを見た気がした
日本画は、本来、素材を他であるいのちの一部としてリスペクトして扱うし
だから生かそうとするものであった
それを、西洋では、芸術でない、工芸だというのかもしれないけれど

没後60年 菊地契月展
笠岡竹喬美術館
〜3月15日

此方も大リスペクトする作家
今回は
放菴からマチエール
契月からは美しく硝子のような硬質で凛とした線を学ぶ
又、彩度が低く場合によってはカビ色になってしまう難しい焼緑色は私も大好きな色だが、
契月も多用していて、
契月が使うと品よく、それは何故だろうというところ、大変勉強になる

敦盛
朱唇
涅歯
草紙洗小町

何れか模写したい
見れなかったものも含め、昭和に入ってから10年間くらいの作品がことごとく良いというか、
もう、凄い。